| それぞれの腺によく見られる代表的な病気を説明します。
A)耳下腺
1) 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、※1) ムンプスウイルスの感染が原因です。幼小児が主ですが成人も罹患することがあります。ただし、一度罹患すると終生免疫が得られるため、再び罹ることはありません。症状は2〜3週間の潜伏期の後、全身倦怠感、発熱などの前駆症状を伴って、通
常両側の耳下腺(ときに顎下腺も)が腫脹し、痛みがあります。頻度はまれですが、睾丸炎(不妊の原因となり得る)、高度の難聴、髄膜炎が合併する事があり、注意が必要です。治療は湿布、水分補給、鎮痛・解熱剤投与などの対症療法しかありません。γ-グロブリン製剤の投与が行われることもあります。
2) シェーグレン症候群(※3)
涙腺や唾液腺などの腺を系統的に侵す自己免疫疾患で、目が乾く、口が渇く症状があり、しばしば耳下腺の腫脹を繰り返す。中年の女性に多くみられ、唾液量
の低下により虫歯(齲歯)が急に多くなります。リウマチ様関節炎や全身性の自己免疫疾患を合併することもある。目が乾燥感や口内乾燥感が続く場合耳鼻咽喉科医や眼科医、免疫を専門とする内科医に御相談下さい。
3)腫瘍(※4)
耳の下や前に瘤(こぶ、腫瘤)を触れます(添付写真5)。多くは痛みはありません。約7割が良性で、残りの3割が悪性腫瘍です。痛みを伴う腫瘤や顔面
神経麻痺(顔が動かせなくなる)を認める時は悪性腫瘍の疑いがあります。治療は手術が原則です。手術では腫瘍の取り残しや顔面
神経麻痺がおこることがありますので耳鼻咽喉科医に御相談して下さい。
B)顎下腺 唾石(※2)
唾液腺の中に石ができる病気です。その9割以上は顎下腺にできます。食事の時に顎下部(添付写
真1-2参照)に激しい痛みと腫脹を伴います。原因は唾液中の脱落した上皮や白血球が核となり、燐酸石灰などが沈着するためと言われています。病歴と触診、X線検査で診断が可能です。治療は唾石の摘出です。石の部位
により、口の内からの摘出する方法と、顎下部の皮膚を切って、石とともに腺及び管を摘出する方法があります。
C)舌下腺 ガマ腫(ラヌラ)
舌下腺の唾液が貯留して柔らかい嚢胞(のうほう)が形成されます(添付写真6)。ガマ腫が形成されると、口の中がガマガエルの口に似ているためこう呼ばれます。症状は口の底部の片側性の膨隆です。治療は口の中からの嚢胞を摘出します。完全摘出が難しい場合は、しばしば嚢胞を開放する措置がとられます。
D)小唾液腺 粘液嚢胞(ねんえきのうほう)
口唇の内側などに小指の先大の柔らかい腫瘤ができることがありますが、その多くはこの粘液嚢胞です。原因は歯などで口腔内の小唾液腺の開口部が傷つけられ、唾液が排出できなくなって貯留することにより起こります。しばしば嚢胞壁が破れて小さくなり、また、時間が経つに従い大きくなることを繰り返します。治療は手術により腫瘤を摘出します。耳鼻咽喉科医に御相談して下さい。
E)その他 口腔内乾燥症(※5)
安静時10分間での唾液分泌量が1ml以下であれば、唾液分泌減少があると考えられます。唾液量
の減少は加齢、服用薬剤、シェーグレン症候群、口腔領域の放射線照射後、などにより唾液腺の働きが低下した場合に見られます。服用薬剤では抗圧剤、鎮痛剤、制吐剤、抗精神薬などの中の一部の薬で口腔内乾燥を引き起こすことがあり、そのような場合、その薬剤を中止するか、他の薬剤に変更することで症状が改善することもあります。その他の原因では、多くの場合治療は難しいですが、薬剤の内服が有効な場合もあります。また、外用薬として人工唾液があります。これにより唾液を補い、症状が軽快する場合もあります。
|