口腔粘膜に発生する炎症は全て口内炎と呼ばれていますが、その原因にはきわめて多くのものが含まれています。口腔は食物を咀嚼し、消化する器官であると同時に、気道の一部を形成していますので、大気中の病原微生物などが侵入し、口腔内にさまざまな感染症が発生する機会にさらされています。また口腔内には既に多くの細菌が常在していますが、全身の免疫力の低下などにより病原菌となり口腔内感染症を引き起こすことがあります。さらに口腔だけに発生する病変以外にも、全身の病気の一部として口腔内に発生する病変や皮膚の病気と関連する口腔疾患などがありますので、これらを鑑別 して治療することが必要になります。

1)口腔にだけ発生する病変  
代表的なもので、既に多くの人が経験しているのがアフタ性口内炎です(図1)。

口腔内に一つまたは数個の境界鮮明な大小さまざまな類円形で黄白色の病巣をつくり、痛みを伴います。長くとも2週間で治癒しますが、再発を繰り返すのが特徴です。この原因には細菌感染や免疫異常、栄養障害、胃腸障害などが挙げられています。この他にも口腔粘膜を化学的、機械的に損傷することによって起こる口内炎や、カンジダやヘルペスなどの感染による口内炎などがあります。

2)全身の病気と関係した口腔病変  
ベーチェット病でも口腔粘膜にアフタ性病変が出現し(図2)、


見かけ上、前述のアフタ性口内炎と酷似しているため、この時点で両者を区別 するのは困難ですが、眼、陰部、皮膚などにも病変が合併すると、診断が可能になります。その他、若い女性に多く、全身に多彩 な症状を発現する膠原病や、鼻、肺、腎臓にも病変をつくるウェゲナー肉芽腫(図3)、消化器症状が強くでるクローン病(図4)などでも口腔病変が出現します。また全身性の感染症に伴う口内炎として、ジフテリア、猩紅熱などがあります。

図3
図4

3)皮膚の病気と関連する口腔疾患  
口腔粘膜と皮膚の両方に病変が出現する疾患があります。しかし、口腔内に最初に病変が出現した場合、診断が困難なことがあります。天疱瘡では口腔内の水疱形成と不規則な赤いびらんを特徴とします(図5)。多形滲出性紅斑でも紅斑や水疱、ビランが生じます。また扁平苔癬では口腔内にさまざまな形の肥厚性病変がみられます。

図5


口内炎と一口に言ってもその病因は多岐に及んでいます。従って、治療方法もうがいをして口腔内を清潔に保っているだけで自然に治ってしまう場合や、ビタミン剤の補給が有効な場合、また抗生物質やステロイド剤、さらに免疫抑制剤の全身投与が必要な場合など、疾患に応じた迅速な治療をしなければなりません。また安易に口内炎と思っていたものが癌であったということもあります。従って、口内炎が出現すれば直ぐに耳鼻咽喉科医を受診し、原因に応じた治療を受けることが大切です。

関連する学会   

日本耳鼻咽喉科学会   
日本口腔・咽頭科学会



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