扁桃病巣感染症とは、扁桃が原病巣となり、それ自体はほとんど無症状であるか、またはときに症状を呈するといった程度にすぎないのに、扁桃から離れた臓器に症状があらわれる疾患をいいます。扁桃摘出術の有効性が報告された疾患は多種多様な疾患に及びますが、中でも極めて高い有効性が報告されている疾患は掌蹠膿疱症、胸肋鎖関節過形成症、IgA腎症です。症状は扁桃自体の症状はほとんどなく、ほとんど2次疾患固有の症状となります。扁桃との因果関係を示す症状としては、上気道炎や扁桃炎にかかると2次疾患の症状が悪化するということです。扁桃と2次疾患の因果関係を調べる検査として扁桃誘発試験と打ち消し試験があります。それぞれ扁桃を直接刺激して、あるいは扁桃の炎症を押さえて2次疾患の変化や体温、血液検査の結果で判定するものです。

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に左右対称性に水疱や膿疱を形成し、やがて1週間で乾燥し、黄褐色の痂皮となります。水疱や膿疱は2-4週間隔で繰り返し発生し、かゆみを伴います。一見、みずむしの様に見えますが、指の間に出ないのが特徴です。


掌蹠膿疱症の扁摘効果を紹介します。経過観察期間は3ヶ月から12年,平均21カ月間行いました.扁桃摘出術を行った181例の治療効果は,皮疹が全く消える「消失」が最も多く78例で43%でした。消失、著効、有効を加えた有効群は147例で81.2%でした。扁桃摘出術を受けなかった77例では有効群は52例で67.6%でした(グラフ)。扁桃摘出術を受けなかった群での治療効果は比較的良い結果が出ましたが、手術を受けなかった例は軽症例が多く、外用薬、経口薬などを用いているのに対して、手術例は重症例が多く、しかも術後はほとんど薬を使用していないことを考えあわせると、扁摘群と非扁摘群の差はさらに大きいものと言えます。


IgA腎症とは上気道炎に伴い、血尿を繰り返す疾患です。確定診断は腎生検が必要です。IgA腎症の扁摘効果を紹介します。経過観察期間は5年から19年、扁摘群で平均9.8年、非扁摘群で8.8年間行いました.治療効果は4群に分けて判定しました。

寛解群: 過去半年以上、蛋白尿・血尿がともに陰性で、腎機能が正常な群
腎機能保持群: 尿所見の異常は続いているが、腎機能は正常な群
腎機能低下群: 腎機能の低下を認める群(血清クレアチニン値1.3mg/dl以上の持続)
腎不全群: 末期腎不全に至り透析を受けているか、または腎移植を受けた群

結果はグラフに示します。扁摘群では寛解率28.2%、腎機能保持率(寛解群と腎機能保持群を加えた率)は90.1%、腎生存率(腎不全群を除いた率)は95.8%でした。非扁摘群では寛解率11.9%、腎機能保持率は76.2%、腎生存率は83.8%でした。腎生検による病理組織の結果にもよりますが、IgA腎症に対する決定的な治療法のない現在、扁桃摘出は効果のある治療法といえます。



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